第12章 -兄弟-(宮地裕也)
すみれの好きな奴…?
「オレ、大坪たちと約束あるから。」
そう言うと兄キは出かけてしまい、
オレとすみれは2人きりになった。
すみれはまたオレの隣に戻ってきた。
なんとなくチャンネルはそのままで、
並んでテレビを見ていた。
「すみれさぁ…」
「なーにー?」
すみれがオレのほうを向く。
すみれはいつもちゃんと
オレの目を見て話す。
ま、立ってる時は
オレが合わせてんだけど。
「お前、好きな奴いんの?」
「え⁈う…ん。」
顔を赤くするすみれに腹が立つ。
「…誰だよ?」
「え⁈」
「兄キは知ってんだろ?」
「それは…その…」
「なんで兄キには言えんのに、
オレには言えねぇんだよ?
お前、○▼×◎◆…‼︎」
「裕也くんっ‼︎」
やべ…言い過ぎたか。
「裕也くんは好きな人いるの?」
すみれはやっぱり
オレの怒鳴り声には動じなかったが、
とんでもないことを聞いてきた。
「オレが聞いてんだろ⁈」
予想外の質問に
思わずまた怒鳴り返してしまった。
「だってすみれも知りたいもん!」
珍しく…いつもより強気だな。
「なんでだよ…」
こっちがおののいてしまう。
「じゃ、壁ドン…して?」
「は⁈それこそなんでだよっ‼︎」
「…帰る。」
「はぁ⁈なんでだよ⁈」
「なんでもっ‼︎帰るのっ!」
すみれはオレを見ずに立ち上がった。
「おいっ‼︎なんなんだよ⁉︎待てよ!」
すみれの手を引っ張って、
こっちを向かせる。
「痛っ…」
「わりっ…」
慌てて手をはなし、
しゃがんですみれを見ると、
すみれの目に涙が溢れていた。
「おいっ!そんなに痛かったのか?
悪かったって…」
「裕也くんのバカ…」
「あ〜もうっ…なんで泣くんだよ⁈」
「だって…ヒック…ヒック…」
ガキの頃から変わらない。
すみれは泣いているのに話そうとする。
「清志く…ん…ヒック…ウソだもん。」
「な…⁈」
ますますわかんねぇ…
「清志くん清志くんうっせーよ!
じゃ、兄キに慰めてもらえよ。」
「…‼︎ゴメン…なさい…。」
「あ!おい…っ」