第11章 -夜空-(今吉翔一)
「翔ちゃんと見るの中3以来だね。
今年は一緒に見れてよかった♪」
小学生のとき、
親と買い物に行ったら
すみれも親と買い物に来ていて、
一緒にこのイルミネーションを見た。
その時、
「キレイだねぇ♪キレイキレイ♪」
と、目を輝かせて喜ぶすみれが
めっちゃ可愛らしかった。
それ以来、毎年このイルミネーションを
すみれと一緒に見ていた。
すみれからせがんできて、
仕方なく一緒に行ってやる…
そんな風に見せていたが、
ほんまは毎年楽しみにしとった。
「キレイだねぇ♪キレイキレイ♪」
すみれは今年も
目を輝かせて喜んどる。
「今年は一緒に見れてよかった♪」
「今のセリフ2回目やで?」
そう言ってワシはもう1度、
すみれの手をギュッと強く握った。
「翔ちゃん⁈えと…どぉしたの⁇」
テンパっとるな♪
「さっきすみれが言うたんやろ?
”素直になれ”って。
たまにはすみれと手ぇ繋いだっても
えぇかなと思ったから、
素直に手ぇ繋いでみただけや♪」
「翔ちゃん、
わたしと手繋ぎたかったの?」
すみれは不思議そうにワシを見上げる。
天然なんやろな。ある意味。
ボケとるわけやないけど、
こういう時、いつも思ったことを
そのまま聞いてくる。
「う〜ん…どやろな?」
「おっ♪すみれやんか♪何しとるん?」
突然向かいから来た男が
すみれに話しかけてきた。
よう見れば、
すみれと同じ学校の制服を着ていた。
「岡本くん?ビックリしたぁ。
居残り補習終わったの(笑)?」
「あぁ。猪熊のヤロー、
すんげぇ課題出してきたんやで。」
「あはは…頑張れ(笑)」
岡本とかいう奴はワシには目もくれず、
ワシのわからない話を一生懸命
すみれにしとる。
すみれがワシの手を
放さんでくれとったのが救いやった。
手ぇ繋いどんの、
忘れとるだけかもしれんがな。
「なぁ、クリスマスどぉすんのや?
すみれが来なきゃ始まらんて
一華たちも言っとったやろ?」
「クリスマスかぁ。
あ!月見てるかな。
今年のクリスマスは、
三日月なんだよ♪」
…‼︎
「なんやそれ?」
「なぁ…岡本くんやったかな?」