第10章 -理想-(火神大我)*★
火神
『オレは困んねーよ。
つか、おまえがオレ無視するほうが、
調子狂ってよっぽど困るっつぅの!
今から行くから、そっから動くな!』
そう一方的に言った火神は、
電話を切ってしまった。
かんな
「今日、荷物それだけだったっけ?」
火神の大きな声は、
電話から漏れていたみたいで、
かんなはわたしのバッグを見て、
聞いてきた。
みつば
「…うん。かんな…どうしよう。」
かんな
「どうもこうも…。
みつばが無視することが困るって、
火神くんが言ってるなら、
無視してないで、
ちゃんと思ってること、
全部言っていいんじゃないかな?」
みつば
「そんな簡単に…。」
かんな
「好きって意識するまでは、
言いたい放題だったじゃない。
それでいいんじゃない?」
笑顔のかんなに言われると、
それでいいような
気がしてくるから、不思議だ。
かんな
「そのほうが2人らしいよ?
ぜんぜん話さないみつばと火神くん、
すごい違和感あったもん。」
みつば
「かんな〜〜〜っ。」
わたしはかんなに
ギューッと抱きついた。
みつば
「わたし、いつからこんな
女々しくなったんだろ?
自分のこと…もっと
サバサバしてると思ってたし、
こんなことで
悩むと思わなかったのに…。
清志くんのことだって…
ショックだったけど、
いつのまにか平気だったし…。」
かんな
「平気だったのは、
火神くんがいたからじゃないの?」
…っ‼︎
みつば
「かんな…わたし、行ってくる!」
火神にどう思われてもかまわない。
まさか火神のことを
好きになると思ってなかった。
火神を好きだと認めてしまって、
フラれてしまうことが怖かった。
だから、ずっと避けてた。
でも…やっぱり
ちゃんと気持ちを伝えたい。
今までのわたしの
可愛げない態度を考えれば、
フラれてしまうかもしれないけど、
何もしないで気づいたら失恋してた…
清志くんの時みたいなのはもうイヤ。
かんな
「みつば、これ!」
かんながくれたのは、
藤宮神社の恋まもりと、
カエルのストラップだった。
みつば
「ありがと!」
カエルのほうは
よくわからなかったけど、
かんなの気持ちが嬉しかった。
わたしはかんなの家を出て、
神社の入り口まで走ると、
そこにはもう火神が来ていた。