第10章 -理想-(火神大我)*★
オレはやっと気がついた。
一人暮らしのオレの家に
女物の服がある…イコール彼女…
ってことか。
「あのなぁ…だから違うって…」
「しかもずいぶんグラマラスな彼女?」
篠崎はオレが渡した服を持ち上げる。
Tシャツだと思って渡したのは、
胸元が広くあいたキャミソールだった。
「あっ⁈いや…っ…これは…その…」
アレックス〜〜〜〜〜〜っ‼︎
たしかにあいつこんな服しか
着てなかったな…。
「だから、違うって。
コレはアメリカのオレの師匠の…」
「ふ〜ん…
アメリカの時からの彼女なんだ?
アメリカ人なら、きっとかなり
グラマラスなんだろうね。」
「おいっ‼︎人の話聞けって。」
止めてもきかない篠崎は、
1人で喋り続けている。
「遠距離恋愛なの?
じゃあ、淋しいね。
でも、彼女だって淋しいんだから、
いくら雨降って濡れたからって、
他の女、部屋に入れたらダメだよ。
しかも、よりによってわたし〜?」
「はぁ…ちげぇって言ってんだろ?
風邪ひくぞ?さっさと着替えてこいよ?
その服がイヤなら、他の貸すから。」
「…帰る。」
「は⁈なんでだよ?
まだ降ってるし、風邪ひくって。
どうしたんだよ?」
「彼女いる人の家で
2人きりなんてムリだよっ。」
「だから彼女じゃねぇっつってんだろ!
つか、なんでこんなことでキレんだよ?
マジで彼女になったみてぇじゃんか。」
…っ⁈
やべ…っ。
オレ、何こんな意識してんだ?
別に篠崎に彼女いるって勘違いされて、
なんの問題もねぇのに、
さっきから必死で誤解解こうとしてる。
「…っ‼︎」
ハッとして篠崎を見ると、
また泣きそうな表情になっていた。
「篠ざ…」
バサッ…‼︎
「バ火神っ…!」
「おいっ…‼︎」
篠崎はタオルと着替えを投げつけて、
そのまま出て行ってしまった。
オレはおいかけることができなかった。