第9章 -安心-(木吉鉄平)*
-木吉side-
「キャ…………」
「すみれっ!」
思わずすみれの口をおさえた。
色々ビックリすることばかりだが、
夜中に女の子の叫び声が響いたら、
嫌でも人が来る。
そうなると、他の人まですみれを…。
というより、
なんですみれは男湯に入ってるんだ?
「…ッ。んんっ!!」
「あ…悪い。大丈夫か?」
「はぁ…はぁ…。」
オレが手を放すと、
すみれはたくさん空気を吸い込むように
深呼吸をした。
….っ。
今更だが…すみれは裸だった…。
温泉のお湯は乳白色だから、
湯舟の中までは見えないが、
髪をタオルでまとめている…。
すみれは肩までつかっているが、
髪をまとめあげてあらわになってる
首筋から鎖骨にかけてのラインや、
風呂の水面が揺れると、
たまに胸元が見える…。
すみれは女だ。
そんなのわかってる。
ただ、いつも”小さくて可愛い”としか
思っていなかった。
今まで意識したことのない
すみれの”女”の部分に、オレは…。
や…やばい…。
「な…なんで女湯に入ってるの⁈」
オレが何も言えないでいると、
すみれが少し睨みながら聞いてきた。
「ん?すみれ、ここ、男湯だぞ?」
「な…⁈そんなウソ通じないんだから!
き…木吉くんがそんな人だなんて
思わなかった!」
「いや…だから、違うって…。
…?すみれ、おまえ、
0時前から入ってたか?」
「…?そうだけど…。」
だからか…。
「この合宿所の温泉、
0時で女湯と男湯入れ替えるんだ。
きっと係の人が
中を確かめなかったんだろうな。」
「え…っ⁈それじゃ…わたし…」
すみれは温泉の中なのに、
血の気が引いたように
顔が真っ青になっていった。
「ご、ごめんなさいっ。
わたし、男湯に入ってるの⁈」
「うん。まぁ…
そういうことになるな。」
「あの…えっと…わたしっ…」
すみれは慌てていた。
可愛いと思ってしまうオレは
不謹慎なんだろうか…?