第9章 -安心-(木吉鉄平)*
「…っ⁈おいっ。
ガキ扱いすんなって。」
「え〜?子どもみたいだもん。
ガキ扱いされても仕方ないでしょ?
中身はオカカだけど大丈夫?」
「あぁ。」
夕食の準備も終わっていたので、
青峰くんと食堂に移動した。
「はい、どうぞ。」
青峰くんにおにぎりを渡すと、
すぐに口に入れようとしたので、
思わず取り上げてしまった。
「こらっ!”いただきます”は?」
「は⁈なんだよ、急に!」
「1歳児でも知ってるよ?
食べる前には”いただきます”でしょ?」
「はぁ…。いちいちめんどくせぇなぁ。
いただきます!ほら、いいだろ?」
「はい。よくできました♪」
ふてくされながら言う青峰くんは
本当に子どもみたいだった。
「おっ!うめぇな。うん!」
「普通のおにぎりだよ〜?」
青峰くんは
あっという間に食べてしまった。
「……ごちそうさま…でした。」
わたしの視線に気付いたのか、
青峰くんは今度はちゃんと言った。
「はい。お粗末様でした。
今度はちゃんと言えたね。
いいコいいコ♪」
皆が使う食器の準備をしながら、
青峰くんに向かって言った。
「だから、ガキ扱いすんなって。」
「だって、子どもみたいだもん。」
「…っ。なぁ?」
「なぁに?」
青峰くんに呼ばれて振り向くと、
いつのまにか青峰くんは
わたしの後ろにいた。
「”いただきます”言ったら、
食っていいっつったよな?」
「え?うん。そうだよ?」
「じゃ…すみれ食っていい?」
「な…っ⁈青峰くん?ちょっ…」
気付いたら、
両腕を押さえられていた。
「いただきます♪」
青峰くんが顔を近づけてきた。
「いやっ‼︎」
青峰くんの力にはかなわないけど、
わたしは目をキュッと閉じて、
顔を背けた。
ヤダヤダっ‼︎木吉くん…っ!
わたしは顔を背けたまま、
心の中でずっと
木吉くんを呼んでいた。