第9章 -安心-(木吉鉄平)*
む〜〜〜。
「お前、食わなくていいのかよ?」
日向が突然オレの横に来て言った。
「はは…っ。すみれは人気者だなぁ。」
「んな悠長なこと言ってっと、
誰かに取られちまうぞ⁈」
「ん?まぁ食べたかったけど、
すみれのケーキはうまいしな。
なくなったらしょうがないよ。」
「だぁぁぁっ。ケーキじゃねぇよ。
檜原だよ、檜原っ!」
「すみれ?
すみれはモノじゃないから、
取れないぞ?」
「だーーーっ。もうっ。
オレが心配してやってんのにっ。」
「だって、そうだろ?
すみれをモノのように扱っちゃいかん。」
でも、すみれのケーキは、
オレが1番に食べたかった。
「木吉くんっ!はいっ。」
「おっ。ありがとう。」
そんなことを思っていたら、
すみれがケーキを持って戻ってきた。
オレはさっそく一口で食べた。
「うん。うまいな!」
「ほんと?よかったー♪
日向くんもどうぞ。」
「おっ。サンキュー。」
「日向くーん!
ちょっと来てーーっ!」
「やべっ。
カントクに呼ばれてたんだった。
オレ、今日カントクと
合宿の打ち合わせあるから、
お前、すみれ送ってやれよ?」
「ん?おう。わかった。
すみれ、オレ、着替えてくるな。
校門のトコで待っててくれるか?」
「うん。待ってるね。」
すみれと2人きりで帰るのは
なんだか久しぶりだな。