第1章 -空中-(青峰大輝)
オレはすみれの首のトコから腕を回して、
抱き締めたままだった。
「大輝くん…?」
「あ?なんだよ?」
「すごい嬉しかったけど…」
「あぁ。」
「胸…触ってる。」
「あぁ⁈触ってねぇよ。
腕当たってんだけだろぉが。」
そう。
後ろから腕回して抱きしめてたら、
途中から胸のトコに腕がきてんのは
気づいてた。
思ってた通り柔らかい。
「もうっ。」
すみれはオレの腕をすり抜け、
こっちを見た。
怒ってスネた顔してるが、
本気で怒ってないのは明らかだった。
「せっかくドラマの主人公みたい
だったのが、台無しだよ?」
そこで一呼吸おき、
今度は笑顔になり、すみれが言う。
「ありがとう。
大輝くんのおかげで前に進めそうだよ。
昨日大輝くんとメールして、
彼のコト吹っ切れたの。」
「ふぅん…そうなのかよ。」
「”オレの女”って言われた時は
ビックリしちゃったけど。」
「あ…あれは…‼︎オレ…‼︎」
「わかってるってば。心配しないで。
あ、時間‼︎そろそろ行かなきゃ。
大輝くんも窓拭きがんばってね!」
すみれはそのまま行ってしまった。
オレは結局何も言えず、
その場に立ち尽くすだけだった。