第5章 さよならの直前:マスルール
セリシアSide
「本当に仕事やめるんすか。」
仕事である女中を辞めるため、世話をしてたマスルールさんのところに挨拶に来た。
世話役っていっても、彼はあんまり部屋にいなかったんですけど。
「よく知ってましたね。」
隠してたわけじゃないけど、マスルールさんってそういうのうとそうだと思ってた。
「まあ、一応。」
「そう…。はい、辞めます。バルバットに移住しようかなって思ってて。」
「バルバット?」
「うん。いつまでもこの国に甘えてちゃダメだと思って。」
珍しくマスルールさんはこっちを見たまま話をきいている。
そして口数も多めだった。
「別に、甘えたっていいと思うんすけどね。」
「そんなわけにはいかないよ。」
だって私はただの女中だし。
特別な人間じゃない。
「だから、お別れを言いに来たんです。」
シンドバッド王にも既に伝えてある。
「いつ…この国をでるんですか。」
「明後日にはいくつもりです。ちょうど船がでるんです。」
「…。」
だから、今日があなたにあう最後の日なんです。
だからありがとうございました、そう言おうとした時だった。