第2章 芍薬の蜜/銀時
『どういうこと……?』
眼前の光景に思わず声が漏れた。
すると坂田はわざわざ私の隣に腰掛け直して偉そうに口を開く。
「ちょっと前に店長の浮気揉み消してやったんだよ」
そのお礼だとさ。
どれでも好きなの飲めよ。
この上なく上機嫌に語る坂田。
どうでもいいが距離が近すぎるし、下手したら唇がぶつかってしまいそうだ。
『へー……そうなんだ』
私は適当な返事をして少し後ずさった。
しかし、その努力も虚しく腰を抱き寄せられてしまう。
「逃げんなよ。仲良くしようぜ?」
『ちょっ……と、嫌だ、やめて』
今更になって気付いたが、坂田の呼気は既に酒の匂いを帯びていた。
此処に来る前に一杯引っ掛けてきたのだろう。
「やめろって言われると余計にしたくなるんだよ」
いくら押し返してもグイグイ迫ってくる白髪の天然パーマ。
このままじゃ襲われる……‼︎
強く目を瞑った時、それは起きた。