第8章 痛いのがお好き/兵長,ジャン
ダンッ……!
凄まじい轟音が部屋に響いた瞬間、俺は木製の壁に後頭部を打ち付けていた。
「てめぇ……これで何度目だ?」
俺の眼前で声を荒げているのはリヴァイ兵長。
彼がどうしてこんなに怒っているかと言うと、それは俺が兵長の彼女であるさんにラブレターを出したことに起因する。
上司の彼女だろうが好きなもんは好きなのだ。
諦められないし、
諦めたくない。
「え、と……三、回目です、かね」
人類最強の壁ドンを喰らいながら俺は辿々しい言葉を紡ぐ。
対する兵長は渾身の舌打ちを披露した後でドスの効いた声を出した。
「四回」
「へ……?」
「四回目だ。なァおい、お前……ジャンよ。こんな異国の言葉を知ってるか?」
【ホトケノカオモサンドマデ】
兵長はやけに難しい言語でそう言った後、思い切り腕を振り抜いて強烈な右ストレートをかました。