第6章 初めて歩く二人の距離
その後も終始悠の王子様っぷりに翻弄され続け、ドキドキが収まらない私は目まぐるしく変化する気持ちに疲れてしまい、帰りの電車の中では彼の肩を借りたまま寝てしまった。
そのことを謝ったけど、悠はいつもの笑顔で
悠「可愛い寝顔見れて、得したわ。」
と甘い言葉を吐き、またしても私の顔を赤に染めた。
当然のように私の家まで送ってくれる悠と手を繋ぎながら歩く道は、ゆっくり進んでいるにも関わらず、いつもよりあっという間に感じてしまう。
別れが近づくにつれ、心の中に寂しさが膨らんでいくと、きゅ、と繋がれた手が強く握られる。
顔を上げると、目を細め柔らかな笑みをした悠と目が合って
悠「……あとちょっとって思うとスゲェ寂しいな。………やっぱり、また俺の家まで連れて帰ってもいい?」
悪戯な視線にドキリと跳ねる心臓。
こ、これって本気なのかな?
それともやっぱり冗談……わ、わかんないよ!
「え、えっと……///」
言葉の真意が読めずに頭の中をぐるぐるさせていると目の前の彼が、プッ、と小さく笑った。
悠「………ハハ、冗談だよ。……また明日な?」
悠は繋がっている方と反対の手でポンと私の頭を撫でる。……その瞬間、酷くがっかりしている自分がいることに気づき、内心焦る私。
も、もしかして……私が答えれなかったから冗談って………なったのかな……?
本当は連れてってほしい………けど、恥ずかしくって言えない………
言える自分だったらいいのにって、こうゆう時いつも自分が嫌になるよ……
気がつくと着いていた家の前。
彼の言葉の通りまた明日にはバイト先で会えるのだが、心と頭は別々のようで、頭では分かっていても心が言うことをきかずに暴走しそうになる。
「……………悠///」
きゅ、と掴んだ彼の服の裾。
悠「!………どうした?」
彼の掌が私の頬に触れ、その目を見ると優しい視線とぶつかって。
「………は……離れたく………ない……///」(小声)
ふ、と細められる瞳。
彼の整った顔がゆっくりと近づき___
「……ん///」
すぐに離れた熱と唇に残る甘い余韻。
悠「………可愛い。……好きだよ。花音」