第6章 初めて歩く二人の距離
とても自然な仕草で私の額にキスを落とした悠に見とれていると、ふ、と細められた瞳。
とても愛しそうに微笑みを向けてくれる彼の姿にきゅうと苦しくなった私の心臓。
別れることがこんなにも寂しいということを、彼と付き合うようになって初めて知った。
デートしている最中の些細な出来事も一々ドキドキしたり、不安になったり……そうかと思えば彼の一言で一瞬で幸せになれたりと、心が落ち着かない。
……でも、その不安もドキドキも全部彼がくれたものなんだって思うとすべてが愛しくて。
数か月前の私は知らなかったこの気持ち。彼と出会って、恋に落ちて、世界が変わったよ。
___"好き"って凄いな、って思ったよ。
じっと見つめていると、ゆっくりと近づいてきた悠の整った顔。
………あ………キス…………///
無意識にゆっくり閉じられた瞼は私が彼のキスを求めいてる証拠で、気がついた時には私の手は彼の服をきゅ、と掴んだまま離そうとしない。
「………ん……///」
重なった熱がゆっくりと離れていくと、触れていた所がジンジンと熱くなってきて。ふ、と耳元に寄せられた彼の唇から発せられるちょっと低めの甘い声と熱い吐息にゾクゾクと体に甘い痺れが走る。
悠「……いっそ俺の家に住んじまえよ。お前」
「へっ///!?悠……!?そ、それって本気……?」
バクバクと煩く騒ぎだす心臓。
恋愛経験の少ない未熟な私の心臓は悠の言動によって翻弄されてしまう。
当の本人はクスクスと口許に手を当て笑いながら私の体をぎゅう、と抱き締めた。
悠「くすっ……テンパんなって。ったく、一々可愛いなぁ、花音は。ま、半分冗談、半分本気だな。……考えといて、ね?」
「~~~っ///!」
………間違いなく悠は私が動揺してる姿を楽しんでいる気がする……///。
う"ぅ………恥ずかしいけど………こんなに綺麗な笑顔が見られるんならいいかな、なんて現金なことを思ってしまう。
この笑顔を自分だけが独占してるなんて、やっぱり非現実的に思っちゃうよ。
今も変わらず柔らかな笑みを向けてくれる悠に胸をときめかせながら、私は再び自分磨きの決意を固めるのであった。