第13章 青学☆不二 周助 編
映画館は思いの外空いていたが……薄暗い館内。
彼女の手を引いて、席へとついた。
映画の内容に、一喜一憂する彼女。
そんな姿を見て、笑みを浮かべる僕。
映画は僕のお薦めだったんだけど、どうやら気に入ってくれたようだ。
映画が終わると近くの喫茶店へ立ち寄った。
彼女から仄かに薫る、ハーブティーの香り。
穏やかな時間を過ごしながら、さっきの映画の話に花を咲かせる。
いつか……来るかな?映画の中のような恋人同士になれる時は。
手を伸ばせば、直ぐ届く距離にいる。
でも……まだ、遠い……。
それから数日後。
最近、クラスメイトのある女子から相談をされたんだ。
気のない相手から想いを寄せられて困っていると…。
彼女もそんな風に……そう思っては、少し切なくなった。
相談を持ち掛けられてから、クラスメイトの濱さんと話す機会が増えた。
そんな光景を彼女が見て、気にしていたなど……このときは、まだ気付かなかったんだ。
濱『今日も、待ち伏せされてたんだよね…。』
不二『そう…。何も言っては来ないの?』
濱『うん。だから、余計に気味が悪くて…。』
でも、ある日……気付いたんだ。
濱さんと…誰かがコソコソと話をしているのを。
相手の特徴を聞き出すと、どうやら話をしていた相手だと言うことが分かった。
僕は、どうやら騙されていたようだ。
不二(フウッ……そういうことか。)
?『不二さん?』
不二『あ、巻村さん。』
彼女から、声をかけてくれるのは珍しい。
巻村『どうかしたんですか?』
不二『えっ?』
僕はあまり感情を外には出さない。
巻村『何か…いつもと違うような気がして。』
不二『君って子は…。ありがとう。心配してくれて。』
濱『不二君!こんなところにいたんだ。探したんだよ?』
何食わぬ顔で、僕に話しかけてくる。