第1章 立海☆仁王 雅治 編
あれから数日。
本人の意に関係なく、妖精の噂話は耳にする。誰が熱烈に想いを寄せているだとか、誰がアタックして玉砕しただとか……
ん?アタックした……?
妖精には彼氏が……
何気に耳に入ってきたのは、どうやら彼氏はいないような話……だったら、【蒼】と言うのは……誰なんじゃ?
仁王『【蒼】か……。』
柳生『【あおい】とは何なんですか?』
仁王『言葉に出てたか……。』
柳生『何か悩み事ですか?』
仁王『そういう訳ではない。ま、気にしなさんな。』
柳生『ですが、最近の仁王くんはよく考え込んでいるように見えますよ。』
仁王『そうか?柳生が言うなら、そうなんじゃろうな。でも、心配されるようなことは何もない。兎に角、ありがとな。』
それ以上は、聞いても無駄だと思ったのか引き下がってくれた。
部活帰り、赤也と歩道橋に差し掛かった時だった。遠くに見覚えのある姿が目に入った。
仁王『妖精……?』
切原『へ?何か言いました?』
仁王『…………。』
言葉にならなかった。
妖精の隣りには、赤也より背の高い男がいた。遠目でも、二人が仲がいいのが見てとれるほど……。
仁王『【蒼】……。』
切原『仁王先輩?』
仁王『何でもない。』
切原『そうッスか。』
珍しく赤也ですら、追及しては来なかった。
俺は…………ショックを受けているのか?
小さく溜め息を吐いた。
二人の姿は雑踏に消えて行った。
そのまま家に帰る気になれず、町をフラフラとさまよっていた。
仁王『9時か……。』
宛もなくフラフラしていたのを止めて、家へと向かう。
仁王『何やってんじゃろうな……。』
?『仁王先輩?』
俺の背後から、声をかけられた。