Liebe ohne Anfang(進撃:ベルトルト夢)
第1章 Liebe ohne Anfang
そう。は自分のエゴを理解していた。いくら遺族の為に絵を描き残すと言っても、それらが遺族の手に渡らなければ意味などない。今描き溜めている絵も、世間に渡らなければ存在しないに等しい。ベルトルトにぶつからなければ、誰にも知られず、ただの後悔を和らげる道具にしか成り得ないのだ。しかし、はそんな自分勝手な想いを受け入れた上で、一つの覚悟をしていた。
「私はきっと、調査兵団に入団すると思う。私は弱いし戦う事も正直怖いけれど、どうしても人の『生きた証』を残したいの。不純な動機だと思う。だって絵を描く時点で、私はその描いた人の『死』を受け入れてしまっているんだもの。巨人を倒すっていう本来の目的も無視してるしね。」
それでも私は、お父さんの跡を継いで自分に出来る事を続けたいの。
そう告げたの瞳には迷いは無かった。まっすぐベルトルトを見据え、己の覚悟を示す。ベルトルトは返事をするために口を開こうとしたが、食事の終わりを告げるベルがなり、タイミングを逃す。そのまま二人は空の皿を手に持って席を立ち、午後の訓練の準備を始める為、それぞれの寮へ向かった。