Liebe ohne Anfang(進撃:ベルトルト夢)
第1章 Liebe ohne Anfang
ベルトルトは息をのんだ。その地域はエレンやミカサの故郷であり、五年前、一番最初に巨人の餌食となった場所だからだ。エレンやミカサとは顔見知りであるのは知っていたが、まさか出身地まで同じとは思わなかった。てっきりエレン達がウォール・ローゼ内に避難した後の知り合いだと思っていたのだ。唖然としているベルトルトをよそに、は話を続ける。
「5年前までは、お父さんの手伝いをしていたの。お父さんは『修復屋』だったわ。」
「『修復屋』?」
家具や建物を直す仕事だろうか、とベルトルトは推測した。しかしの次の説明に、またもや驚かされる。
「死んだ人の顔を、できるだけ自然な状態に戻すお仕事なの。」
聞いた事もない職業だった。
「そんな仕事があるのか。」
「珍しいかもしれないわね。普通なら飛び降り自殺とか、事故で顔が見れなくなった遺体を直すから滅多に必要とされないもの。でも、シガンシナ区では調査兵団の人達に重宝されたわ。」
そう。常に人が死に、そして常に遺体が損傷して帰ってくる調査兵団の者達にとって、『修復屋』は貴重な存在である。
「時々、死んだ兵士の家族が依頼をしたりするけれど、大体は調査兵団に入った本人が頼みにくるの。…きっと五体満足で家族の元へ戻れない日が来るのを覚悟してたんだわ。生きてる頃に訪ねてくれば、私が彼らの顔を紙に描いて、お父さんがそれを見て顔を彫刻するの。体はさすがに復元しないわ。けど、せめて葬儀で亡くなった人達の顔が分かるように、名前を一緒に刻んだ彫刻を倉庫に保管してたの。」
淡々とは懐かしむように話し続けた。予想以上に重たい話に、ベルトルトはただ静かに聞き入れるしかなかった。