Liebe ohne Anfang(進撃:ベルトルト夢)
第1章 Liebe ohne Anfang
「ごめんなさい、ちゃんと前を見て歩いてなくて。」
頭を下げた後、は地面に散らばる紙を出来るだけ早くかき集める。
「僕の方こそ、不注意だった。これ、どうぞ。」
「あ、ありがとう。」
ぶつかった背の高い少年は、幸いにも穏やかな性格をした人だった。顔を見て、同期の訓練兵である事に気づく。そのまま通り過ぎる事も出来たはずだが、彼はと一緒にしゃがみ込みこんで絵を集めるのを手伝ってくれた。そうして手渡した残りの紙を見たのか、少年は思った事を口にする。
「絵が、上手なんだね。」
「…ありがとう。ごめんなさい、勝手に貴方の顔を描いてしまって。」
が彼から受け取った紙束の一番上には、今まさに目の前にいる少年を描いた絵があった。趣味とは言え、許可無く彼や他の人の顔を描いた事に多少の罪悪感を覚えて、は少年に再び謝る。
「いや、僕は構わないよ。逆にライナーにも見せたいぐらいだ。…けど、すごい数を描いてる。もしかして、訓練兵の皆を?」
嫌な顔所か、少年は素直に感銘の意をに伝えた。それもその筈だ。先ほど地面に広がっていた紙は、数枚の白紙以外は全て似顔絵が描かれており、どれも見覚えのあるものばかりだった。そんな少年の反応に安心したのか、は安堵した笑みで返事をする。
「ええ。私に出来る唯一の事だから。」
兵士としては役に立たない技術かもしれないが、は自分の特技に誇りを持っているようだ。拾った紙束を大事そうに抱え直す。
「凄いんだね。…君の名前は? 僕はベルトルト・フーバー。」
「・。宜しくね。」