Liebe ohne Anfang(進撃:ベルトルト夢)
第1章 Liebe ohne Anfang
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ふと、体を包む温かい熱を感じる。我に返れば、は霧の中から現れたベルトルトによって抱え上げられているのに気づいた。彼は邪魔なだけのの立体機動を外し、片腕でを支えながら己の立体機動で器用にその場から移動する。数々の巨人の間を巧みに駆け抜け、最も内側の壁であるウォール・シーナの上を通り過ぎてゆく。戦いに専念している他の兵士達の目を盗み、を安全な場所へと移動させたのだ。
しばらくは人気のなさそうな路地裏に、ベルトルトはをそっと座らせる。今の騒ぎでは、たとえ医療班に連れて行ってもまともな治療はされないだろう。そう考え、ベルトルトはせめて終戦を静かに待てる場所を選んだのだ。
未だ生理的な涙が流れるの顔から髪を払い、親指の腹で涙を出来る限り拭い取る。そして何も言わず、彼はその場を立ち去った。立体機動を使い、まだ戦いの最中にいる仲間の元へと向かって行く。