第9章 風邪を引いて… 〈夜久衛輔〉
*夜久
タオルの水を取りかえろそっと立ち上がって行こうとしたとき―
ギュッと制服の裾を引っ張られた。
それと同時に今にも泣きそうな顔で朱鳥が言う。
「どこいくの?」
って。
夜「…。タオルの水を取りかえろと「どこいくのよぉー…っ。」…朱鳥…。」
俺の話を聞かずにただ震える声でそう言った。
俺は再びその場に座って裾を掴んでいる朱鳥を裾から離して俺の手で握った。
夜「どこにも行かない。ずっとそばにいてやるから。
だから安心しろ。」
そう言って朱鳥の頭を撫でる。
「……ん…。」
そう言い残して朱鳥はまた目を閉じた。
閉じた朱鳥の目から少し涙が流れた。
ずっと我慢してたを知ってる。
親のことを思い自分の気持ちを押し殺して淋しいことを言わなかったことを。
しかもそのことを誰にも相談しようとしなかったことを。
昔から何でも一人で抱え込んでしまう癖があった。
きっと周りに心配かけまいと無意識のうちにそうしているんだと思う。
だから。
俺はそばにいてあげようって
決めていた。
夜「でも朱鳥。こういうときは"どこいくの"じゃなくて"行かないで"だろ。」