第8章 私は兄が嫌いで好き?〈及川徹〉
徹「何やってるの朱鳥?」
それは兄だった。
兄はしっかりと私の肩を抱いて言う。
男1「なんだよアンタ?」
徹「ああ。これ俺の彼女だからその手離してくれる?」
兄は軽い口調で言っているが笑っているはずのその目は笑ってはいなかった。
しばらく沈黙が続く。
兄は男達を睨んでいるかにも思えた。
その兄の視線からか。
それともこの少し重い空気からなのか
私の腕を掴んでいた男がスッと手を放した。
男2「おい…もう行こーぜ。
男3「そ…だな!俺等そんな暇じゃ無いんだ。」
そう言って男達は立ち去った。
そのあと足は心配そうに私の顔を見た。
徹「大丈夫、朱鳥?」
「……っていうか…"彼女"って何?私、兄貴の彼女なんて死んでも嫌なんだけど?!」
徹「え!?酷くない!?せっかく助けてあげたのに…。」
「…でも………
ありがと…。」
恐怖の解放からか私は兄に抱き付いていた。
徹「…もう…大丈夫だから…。」
兄は優しく頭を撫でた。
「うぅ…。」
その優しさと温もりに涙が溢れた。