第79章 素直になりたい恋心〈松川一静〉
そして
気づいた時には、片方のイヤホンが外されていた。
「おっ!俺この曲知ってる。」
片耳イヤホンのせいで誰の声だかはわかんなかったけど、こんなことするのは、ひとりしかいない。
「ちょっと、貴大ー遅い…………!!?」
そう名前を呼びながら振り向くと、
そこには────
「松川っ!!!?」
貴大ではなく松川だった。
松「よ!」
「なんで、ここにいるの!!?」
貴大と間違えたこととか、ちょうど松川のことを考えていたせいで、いきなり現れた本人に私は心臓が張り裂けそうだった。
松「あー…部活終わって来たら黒羽が見えたからさ。」
「ふ、ふーん。で、何の用?」
そしてつい強い口調で言ってしまう。
松「あーそうだ。これ英語のノートのお礼。確か黒羽これ好きだったろ?」
そう差し出したのはホットのミルクココアだった。
確かに私が好きなやつ。
そういうことを覚えてくれていることに余計ドキッとする。
「別にいいって言ったんだけど。」
松「いいから貰っとけよ。せっかく買ってきたんだから。」
「っていうか貴大は?私貴大待ってるんだけど?」
素直に喜べない私はココアを受けとるとそう言った。
他人から見たら感じ悪く見えたと思う。
でも私にとってはそれが精一杯の話の繋ぎだった。
松「今日鍵当番だってさ。なーこれ俺も聞いてていい?」
だけど、松川は何とも感じてないように答えた。
「…別にいいけど。」
そして私が答えると隣に座った。