第75章 私の中のヒーローへ〈金田一勇太郎〉
目を覚ましたら、知っている天井が最初に見えた。
「……ここ……保健室……?」
勇「あぁ、あのあとお前をここに運んだんだ。保健の先生はいなかったけどな。」
声のする方を向くと、私の寝ているベッドの横に勇くんが座っていた。
「そうなんだ。………あ!っていうか部活は?!」
ふと部活があったことを思い出して聞いた。
勇「もう始まってる。」
壁にかけられている時計を見ると部活はとうに始まっていた。
「なんで!!?早くいきなよ!?先輩達に怒られちゃうよ!!?私は平気だから!」
勇「ぶっ倒れた幼馴染み置いて行けねーよ。先輩達には行ってあるし、大丈夫だろ。」
それを言われ少し冷静になる。
「……。ごめん、ありがとう。」
勇「おう。」
それから少し沈黙が続いて気まずって思っていたら。
勇「お前、もう少し寝てなくて平気か?しばらく側にいるから何かあるなら言えよ?」
体を起こしている私に気をつかってそう言ってくれた。
本当に優しくて、好きだって気持ちが溢れて胸が苦しくなった。
「じゃあ……。」
私はベッドから身を乗り出して勇くんに抱きついた。
勇「はっ!?ちょ、朱鳥!?」
「さっきは助けてくれてありがとう…。勇くんが来なかったら私はあいつらに連れていかれてた……本当にありがとうね……。」
勇「いいって、間に合ったんだし。」
「勇くんは小さい頃からいつも私を守ってくれてるよね、ヒーローみたいに…本当感謝してる……。」
勇「ヒーローって別に大したことしてねーよ。」
照れ臭そうに顔を背ける。
「でも勇くんが私を助けてくれたのは私がバレーの"大事なマネージャー"だからなんだよね……。」
勇「?そうだけど、どういう意味だ?」
その瞬間私の恋は終わったって思った。
今にも泣きたかったけど、我慢して涙をこらえ、少し唇を噛み締めた。
「本当鈍感だね勇くんは……。」
もうフラれたのはわかった。
だけど、これだけは言わせてほしい……。