第73章 憧れのあの人〈赤葦京治〉
すると、黒羽さんは俺に背を向けて言い出した。
「…はぁ……何で言っちゃうのかな……。」
赤「え?」
最初はその言葉の意味がわからなかった。
「だってもし、付き合ったとして、私は今日卒業したんだよ?……赤葦がどこの大学行くかわかんないけど、ほとんど会えなくなるんだよ?……だったらお互い伝えないまま別れた方が辛くないし、寂しい思いもしないですんだじゃない…。」
赤「……え…それって……。」
「……私も赤葦が好きだってこと……。でも付き合わないでおこう?いつでも会えるわけじゃないわだし…。」
赤「いいです。」
俺の答えを聞いて黒羽さんは振り向いた
「え?」
赤「めったに会えなくてもいいです。今までみたいにLINEやときどきの電話だけでいいんです。だから…俺と付き合ってください。」
「……赤葦がそんなに必死に何かを求めようとしてるのはじめて見たかも……。」
黒羽さんは少し驚きながらそう言った。
赤「俺だって好きな人は自分のものにしたいし、誰にも渡したくないですよ。」
好きではないとフラれたならここまでしない。だけど、会えないから付き合えないということなら話は別。
「……私……一人暮らしに慣れるまであんま時間空けられないし、電話とかも夜になるよ?」
確かめるように黒羽さんはそう聞いてきた。
赤「それでもいいです。黒羽さんと付き合えるなら…。」
すると黒羽さんは………。
「……そっか……嬉しい……。ありがとう赤葦……お願いします。」
やっと思いが届いたのか嬉しそうに微笑んだ。
赤「…いえ…こちらこそ……。」
俺はそんな黒羽を強く抱きしめた。