第68章 届け、私の想い!〈月島蛍〉
一瞬、時が止まった気がした。
朱鳥が引っ越す……?
そんなこと、一度だって聞いてない。
先週うちに来たときも……。
母「何でもお父さんの転勤で東京に行くみたいよ。」
蛍「でも、担任は何にも言ってなかったけど……。」
母「クラスのみんなに言うと、辛くなるから言うなら転校してからにしてほしいって頼み込んだみたいなのよ。…まさか蛍にも言ってなかったなんて…。」
理由を聞けば朱鳥らいしかった。
昔から辛いことがあると、うまく喋られないほど泣いていた。
それは今でも変わってない。
だから、人に本音を話すのはなかなか無かった。
ただ、僕にだけは何でも話した。
それなのに、今回朱鳥は僕に何も言わずにいなくなろうとしている。
疑問を抱えなから、僕は手にしていた手紙を開いて読んだ。
『蛍へ。
この間の勉強教えてくれたお礼だから
よかったら食べてね?
あと私、引っ越すことになったの。黙っててごめん。
この16年近く蛍と過ごせて凄く楽しかったよ。
もっと言いたいことあるけど、書ききれなくなるから一番蛍に伝えたいことだけ言うね?
ずっと前から蛍のことが好きでした。
でも蛍には好きな人がいるみたいだし、私の一方的な告白だから気にしないでね。
蛍の恋応援してるよ。
じゃあ、今までありがとう。
バイバイ。』
そんな長くもない内容だった。
手紙を読み終えた僕は手紙を握りしめたまま家を飛び出した。