第67章 トリップ体験〈in烏野〉
その後、大地さんから肉まんをもらい、
みんな自分の家の方に帰っていく中、私は自転車を手で押しながら歩く日向と一緒に帰っていた。
私の家は日向が毎日通る山の手前にあるから、よくこうして帰っている記憶があった。
日「なんか、黒羽さん今日元気無かった?」
「え?あーー…えっと……。」
日向に言われてどうしようか迷っていると
日「俺でよかったら話聞くけど?」
その言葉が少し頼もしく感じで私は話すことにした。
「うん、ありがと。……実はさ、今日一人ぼっちの夢見てさ。日向とか、一緒にいてくれる人が誰もいない寂しい世界。回りにはたくさん人がいるのに、誰も話しかけてくれなかったりして、いつも私だけ一人なの。それがすごく辛くてさ…。」
私が話したのはトリップしたことではなく、そんな孤独な夢の話。
日「でもそれって夢の話だろ?今は俺たちがいるじゃん!」
「まぁ、そうなんだけどさ。今後もしそうなったらと思ったらさ…。」
日「うーん。じゃあさ、自分から声かけてみたら?自分から踏み出してみないと、変わるもんも変わらないと思うけど?」
「で、でも。」
日「黒羽さんなら大丈夫だって!んで、もしそれでも一人になりそうだったら俺がとんでってやるから!!」
「…日向……。うん、ありがとう。」
私は日向の言葉が凄く嬉しくて、心強くて、涙が溢れた。
日「わっ!!なんで泣いてる!!?」
「ご…ごめん……嬉しくて……。」
日「あ、俺、今ティッシュしか持っていけどこれ使って!?」
日向は鞄からポケットてを取り出して私に渡した。
「日向に相談してよかったよ。ありがとう…。」
しばらくして涙が止まった。
日向「どういたしまして!じゃあまたな!」
日向はニッと笑って自転車を走らせていった。
「うん。またあした!……あ、返し忘れちゃった。」
日向に手を振って気づいた。
日向が貸してくれたポケットティッシュを渡すのを。
まぁ明日返せばいいかと思い私は家の中に入った。