第63章 奇跡のような恋〈黒尾鉄郎〉
だけど、身体に痛みはなく、優しく包まれてる感覚に私は目を開けた。
目の前には倒れそうになっている梯子を片手で押さえているのが見てた。
「…あぶねー…。大丈夫か?」
「…う、うん、ありがとう……って、黒尾くんっ!?」
その声に振り向いて私はつい声をあげてしまった。
だって彼は同じクラスであまり話したことがないうえ、私がずっと思いを寄せていた人だから…。
しかもその人との距離はほとんどなく、梯子を支えていないもう片方の手で私の肩を抱いていたんだもん。
黒「あ?何そんなに驚いてるんだ?」
「え、いや、あんまり話したことないから……。」
黒「あーそうだっけ?ってか気を付けろよ、そこのドア開いてて見えたから良かったけど、ドア閉まってたり、俺が来なかったら頭とか打ってたぞ。」
「う、うん。ごめん。もう大丈夫だよ。」
そう言うと黒尾くんは私の肩から手を離し私は黒尾くんから離れた。
正直言うと、心臓がバックバクで耐えられなかった。
黒「つーかこんなところで何してたんだ?」
「あ、えっと、この本次の授業使うからって担任に頼まれてて取りに来たの。」
私は近くに落ちていた取ろうとしていた本を拾って見せた。
黒「そっか、黒羽クラス委員だもんな。」
「え?」
私は少し驚いて声をだしてしまった。
黒「あ?どうした?」
「あ、えーと私の名前覚えててくれたんだと思って。」
黒「何言ってんだ?同じクラスだろ?」
「そうなんだけど…皆"委員長"って呼んで、名前呼ばれるの久々…。」
そう、私は地味で、友達が少ないせいか、名前で呼ばれたことがあまりない。
だから、すごく意外だった。
しかも大好きな黒尾くんに名前を呼ばれてもらって嬉しかった。