第62章 夏と野球とバレーボール〈菅原孝支〉
咄嗟についた嘘だった。
本当は忘れ物なんかしてない。
ただ、黒羽を待っていたいと思ったそれだけだった。
それから、15分……いや、30分ぐらいたってから。
「あれ?菅原?」
後ろから黒羽に声をかけられた。
「なにしてんの?バレー部はもう帰ったんじゃなかったっけ?」
不思議そうに首をかしげだ。
菅「まだちゃんとスイカのお礼言ってなかったからさ。」
「あぁ、別に良かったのに。」
菅「いや、一応さ、ありがとうな!」
「うん、どういたしまして!」
黒羽は軽く微笑んだ。
それが余計俺の胸を苦しめた。今にでもこの思いを言ってしまいたい。
菅「そう言えば、黒羽っいつもこんなに遅いのか?」
それでも俺はそれを押さえて切り出した。
「まぁーね。洗濯にスコア付け、片付けとボール洗いしてるとね。ほら、マネージャー私しかいないし。」
菅「そんなにやることあるのか?大変だな。」
「んー…でも皆ご練習頑張れるためだし、意外と楽しいから平気!っていうか、マネージャーなら、潔子ちゃんもそうでしょ!」
菅「まぁそうなんだけどさ」
大変でも楽しそうに話す黒羽と話していて改めて黒羽が好きなんだと思った。