第57章 敵わない相手〈花巻貴大(松川一静)〉
*朱鳥
今、私はピンチに陥っている。
せっかく貴大くんと水族館デートだったのに、トイレに行った帰りに四人組の男子にナンパされてしまった。
あまり複数の男子とか苦手なのに、チャラそうだし、うざったい。
こういう時ハッキリ言えればいいのに。
男1「ねぇー話聞いてる?」
男2「俺らと遊ぼーよ!?」
男3「君可愛いから奢っちゃうからさ!」
「いや、あの私連れがいるので……。」
男4「いいじゃん俺らとの方が楽しいって!」
男1「俺らさっきまで他の子といたんだけど逃げられちゃってさ~暇してたんだよね!」
"他の子"
その言葉に中学の嫌なことを思い出した。
……中学のとき付き合ってもすぐに別れた彼氏が、別れた翌日には新しい女の子と付き合っていた。
それで、彼にとって彼女になるなら誰でもよかったんだ。そう思った。
別れた原因もあったけどその事の方が結構辛かったのを覚えてる。
そんなことを思い出していると。
男2「別に悪いことはしないからさ!」
そう一人の男子の手が私に触れようとした時。