第57章 敵わない相手〈花巻貴大(松川一静)〉
そんなこんなでとりあえず時間が過ぎた時だった。
「あ、私ちょっとトイレ行ってくるから待ってて。」
そう言っ朱鳥がちょっと離れたトイレに向かっていった。
貴「………で、いつまで付いて来るんだよ。」
松川と二人っきりになった俺はそう問いかけた。
松「さぁーな。」
貴「お前、俺のことそんなに信用してねーの?」
松「別にそういう訳じゃねーけどさ。もうあいつに恋愛のことで辛い思いはさせたくねーんだ。」
貴「もう?」
松川の台詞に俺は疑問を持ち聞いた。
松「……あいつが中二のとき、初めて出来た男に、無理矢理抱かれそうになって拒否ったら即別れたんだよ。しかもそいつ、すぐに新しい女作ったとかで朱鳥にとっては結構キツかったみたいなんだよ。」
貴「………そんな事あったのかよ。」
松「まぁ、今はもうそんなに気にしてねーし。相手も評判悪かったから別れて正解だったっていってるけどな。」
初めて聞かされた朱鳥の過去。
昔から朱鳥の面倒見ていたからそんな事があれば心配にもなると思った。
だけどー……
貴「……松川、俺は絶対朱鳥を傷つけないし、辛い思いもさせない。だからさ………」
"もう少し安心してくれよ。"
って言おうとしたとき、トイレから戻ろうとしている朱鳥を見つけた。
しかも四人ぐらいの男にナンパされてるようだった。
もちろんその様子は松川も見ていた。