第51章 守りたいもの〈国見英〉
朱鳥がガラッと教室の戸を開ける。
だけど、
朱鳥は中に入ろうとせず、持っていた鞄をドサッと床に落とした。
英「…朱鳥?」
様子が変だと思って朱鳥の後ろから教室の覗いた。
そこには……
鈴木と他のクラスの女子が抱き合ってキスしていた。
「こ……公平…くん……?」
鈴「…!!朱鳥!!?」
その途端鈴木はその女子から離れてた。
そして少しの間沈黙が続いた。
「……そっ……か。そうだよね、私よりその子の方が可愛いもんね……。………邪魔してごめんなさい……。」
いつも控えめで強く言えない朱鳥は
そう言うと鞄を置いて逃げるように俺の横を通りすぎて走っていった。
ちらっとしか見えなかったけど、
通りすぎた朱鳥の横顔は
階段から落ちて怪我をした時よりも
飼っていた猫が死んでしまった時よりも
辛く悲しそうな顔をしていた。
そんなの当たり前だ。
ずっと好きにだった男に告白されて、信じて付き合ったのに一ヵ月も経たないうちに裏切られたんだから。
俺はそんな朱鳥の顔を見て悔しくなった。
そして朱鳥のとこを追いかけようとしない鈴木に腹が立った。
英「朱鳥とこ追いかけないの?」
俺はそう鈴木に言うけど
「……。」
鈴木は黙ったままで目をそらした。
結局、こいつは朱鳥の事をそれぐらいしか想っていなかったんだ。
朱鳥はあんなにも想い続けたのに。
英「……お前、最低だな。」
俺はそれだけ言って朱鳥の鞄を持って追いかけた。