第26章 桜日和 <赤葦京治>
しばらくして
朱鳥が泣き止む。
「…ありがと。もう大丈夫。」
そっと俺の腕の中から離れた。
「朱鳥…俺はずっと前から……(チュ…)…!!」
"朱鳥のことが好きなんだ"って言おうとしたとき朱鳥が俺に優しいキスをしてきた。
「もう…行かなきゃ……。バイバイ……。」
朱鳥は俺から離れると泣き止んだばかりの赤い目で微笑んだ。
そして俺に背を向け走り去ってしまった。
俺は行ってしまう朱鳥の姿を見ることが出来ず振り向かれなかった……。
もう朱鳥に会うことはない
と思ったときだった。
「……京治っ!!!!」
その声に振り向くと
朱鳥が公園の入り口近くに立っていた。
「6年後の今日……またこの場所で待ってる……。」
朱鳥はそれだけ言い残し行ってしまった。
そこでようやく思い出した。
丁度1年前
俺と朱鳥はここで会って
今日朱鳥と別れた。
1週間待ったと言うのもそのためだろう。
そして朱鳥は6年後の今日にまた俺と会おうとしている。
6年後と言ったら
大学を卒業しているかすでに就職している辺りだろう。
朱鳥はそれも考えて6年後にしたんだと思った。
俺は絶対朱鳥とのこの約束は忘れないと決めた。