第13章 ずっとこれからも…。 〈菅原孝支〉
*孝支
烏養コーチと話を終え部屋に戻ろうとしたときコツンと足に何か当たった。
それは俺が一年の時の朱鳥の誕生日にあげたシャーペンだった。上の方に小さなバレーボールの飾りがついているピンクのシャーペン。
その頃、金がなくてシャーペン一本しかあげられなかったのに嬉しそう喜んで今でも使ってくれている。
俺はそれを拾って朱鳥のいる個室に向かった。
コンコン
孝「おーい朱鳥ー。」
ノックをしたのに返事ない。
孝「…入るぞ?」
そう言ってドアを開けて中を覗く。
だけどそこには一人分の布団と朱鳥の荷物があるだけで肝心の朱鳥は居なかった。
俺はみんなのいる大部屋に言った。
孝「なー朱鳥見なかったか?部屋に居ないんだ。ケータイも繋がらないし。」
田「黒羽さんですか?いや俺は見てないッスけど。」
西「俺らもずっとここにいたけど来なかったよな?」
田中と西谷が答える。
孝「そうか…。」
田「トイレにでも行ってるんじゃないッスか!」
孝「…それならいいんだけど…。」
とそこに廊下から月島と山口が歩いてきた。
月「黒羽さんならさっき体育館に忘れ物したって出て行きましたよ。」
孝「本当か?」
月「はい。」
田「つーか月島!黒羽さんは一応女子なんだから付き添ってやつとかしてやれよ!!もう暗いし危ないだろ!?」
月「僕もそういったんですけど、断られたんですよ。」
孝「(っていうか"一応女子"とか言って朱鳥がここに居たら怒ってただろうな…)。わかった月島。ありかどうな!俺ちょっと見てくるから大地たちに言っといてくれ!」
月「わかりました。」
俺は合宿所から外に出た。
朱鳥が忘れ物するなんてありえない。
いやありうるかもしれないけどその確率は低い。
朱鳥は結構しっかり者だし、忘れ物したことなんてほとんどない。それに今日体育館を出るとき体育館全体を見たけど何一つ忘れ物らしき物はなかったから。
体育館にいないとなると俺には一つしか心当たりがない。
いつもお互い相談事をしたり反省会をしたり待ち合わせにも使っている学校から近い公園。
行ってみると予想通り朱鳥がいた。
ベンチに座って膝を抱えて踞っていた。