第12章 叶わぬ恋でも…。 〈月島蛍〉
保健室で二人っきりになった。
少ししてから蛍ちゃんが手を私の額に当てた。
蛍「…熱どのくらいあるの?」
「…えーと……38度ちょっと……。」
蛍「ちょっと高い…昨日ちゃんと暖かくして寝た?」
「え…えーっと…。」
言葉に迷った。
だって暖かくして寝たって言われても昨日は一睡もしてないから…。
しかもアルバムを見るに夢中で寝間着だけで何も羽織らなかった。
風邪を引いても当然の結果。
でもそんなこと蛍ちゃんに言いづらい…。
とそこに…
「あら?お兄さんの方来てくれたの?」
と声の方を向くと保健の先生が立っていた。
保「今お家に電話をしたんだけど誰も出なくてね…。」
蛍「…今日は親はどっちも仕事なんで家には誰もいないんです。」
先生の質問に蛍ちゃんが私の代わりに答えた。
保「そう…困ったわね…。熱は少しでも早く家に帰って安静に寝た方がいいんだけど…。」
蛍「大丈夫です、僕連れて帰るんで。」
「「え…?」」
私は蛍ちゃんの方を見た。
蛍「早退届出しましたし、担任にも許可は貰いましたから。」
保「そう…。それならよかったわ。それじゃ私一度職員室に戻るわね?すぐに戻るから勝手に帰らないでね!」
そう言って保健の先生が出ていった。
「……。でも蛍ちゃん、授業は?またあと二時間あるよ?それに部活も…。」
私は体を起こして聞いた。
蛍「僕より自分の心配したら?…部活も武田先生に言っといたから…。……ほら帰る準備して。」
蛍ちゃんは壁に付いてあるフックに掛けてある私のブレザーを取って渡した。
「…う…うん。ありがと。」
私はブレザーを受け取りベッドから降り上履きを履く。
軽く服装と整えカーテンの外に出る。
保健室の椅子に座ってしばらく先生を待つ。
何分からして先生が戻ってきた。
保「帰る準備できた?」
「はい。」
そう椅子を立つと
蛍「ほら、乗りなよ。」
蛍ちゃんが背中をこちらに向けて座り出す。
「え…。でも鞄もあるし…。」
蛍「別にこれくらい平気だし、だいたい無理して帰ったらまた倒れるかもしれないでしょ。」
「…うん…そうだよね…。ありがと。」
そっと蛍ちゃんの背かに乗った。
保「じゃあ気をつけてね。」
保健の先生は玄関まで来て見送った。