第4章 想い袋 白昼夢
「と、とにかくだ。凛子さえ、よければ……」
「私、旅なんてしたこと、ない」
「ああ」
「よく、わからないことばかり。怖い、とかも、よくわからない」
「ああ……」
「辛いとか、悲しいとか、嬉しいも……わからない」
凛子は三角座りし、膝に顎を乗せ目を伏せた。彼女の視線に合わせるように、囲炉裏を挟んで向かい側にギンコも腰を下ろし彼女の言葉をゆっくりと噛みしめる。
たどたどしく、けれどしっかりと。言葉を、声に出して伝える凛子に、ただギンコは黙って耳を傾けた。そこに響く、彼女の声だけを頼りに。
「でも、ギンコとね、一緒に過ごすと胸の内に火が灯るの。暖かくて、じんわりと広がる、感覚。それって何? よく、わからない。だから、知りたいと、思えたりする。ギンコが、笑う……? と、私もそうしたいと、思えたりする。なんでだろう」
「そう、か……」
「うん。ねぇ、ギンコ。私って、気持ち悪い?」