第4章 想い袋 白昼夢
希望があるから、人は歩いて行ける。今日も明日も明後日も、生きていける。絶望ばかりではないことを知っているから、悲観したとしてもぐっと受け止めて、歩いて行ける。失ったものは、もう二度と戻りはしないけれど、その分だけ新しいものを手にしよう。それだけが、唯一の救いだと信じて。
凛子が目を覚ました時、そこにギンコの姿はなかった。結局、彼にも治すことは出来なかったのかもしれない。そう思っていなくなってしまった彼の面影を探すかのように、玄関の扉に手をかけた。すると、同時に扉が開け放たれ珍しく凛子はぎょっとした。
「あ? ああ、凛子か。悪い、驚かせたか?」
「いや、大丈夫。おは、よう?」
「ん、おはよう」
ギンコの手には、凛子の見知った花が握られていた。例の、藍色の花だ。纏の瞳は、藍色の花の色に染まるかのように色を持つ。微量の変化とはいえ、ギンコは逃すことなく感知する。藍色の花は、光を浴びながら神々しくどこか光っているように見える。怪しくも、美しい花。
凛子の瞳から遠ざけるように、ギンコは藍色の花を手に囲炉裏の方へと近づいた。