第1章 想い袋 朝焼け
ギンコと同じ、白髪の美しい髪、しかし肌は透けるかのように白く、あまりにも細い腕に不安になる。――生きて、いるのだろうか? そんな疑問さえ、浮かんでくるほどに。少女に近づくように歩みを進めれば、あともう少しという距離のところでようやく少女が反応を見せた。
「誰……?」
ゆっくりと、スローモーションのようにギンコの方へ、顔を向ける。開かれた瞳を見つめて、ギンコは再び目を見開く。少女の瞳は、まるでガラス玉のように金色に光っていた。その瞬間、何故だが不思議と全ての生命の源とされる、あの光る川を思い出す。
「俺は、蟲師のギンコという。お前さんは村の娘か?」
「うん……。凛子、っていうの」
少女の凛とした声が、やけに耳に残る。何も、他の人と変わりはないはずなのに、ギンコにはやけに特別に聞こえた。
「雨のせいで山を登り切れんくてね、この村に宿を取れるところはないだろうか?」
「宿……。ない、と思う。よければ、上がっていって。両親は、いないから、一人だから」
凛子と名乗った少女は、家屋の戸を開けギンコを招き入れる。ギンコは一瞬躊躇うが、このまま立ち往生して雨の中野宿となっても、具合が悪いと思い有難く彼女の世話になることにした。