第3章 想い袋 闇夜
そうだ、これは夢なんだ。こんな酷い現実があるわけがないんだ、だから目が覚めれば全部うそになるんだ。そう信じて、ぎゅっと目を閉じた。
「ったく、お前たちみたいな餓鬼がいるからわしらが食いっぱぐれるんだよ……子供なんてこの村には必要ないんだよ!!」
村長は徐に鉈を掴むと、紗季へとその切っ先を振りかざす。
「や、やめてええええええええ!!!」
「ああああああああああ!!」
ようやく出た、凛子の悲鳴は紗季の悲鳴と混ざり合って不快な音を部屋中にまき散らす。劈くような痛ましい悲鳴と、肉を切る生々しい音と、赤が視界を覆って凛子は玄関先へと這うように後ずさった。
――なんで、どうして、どうしてっ……!!
ふと、玄関先に見たことのある外履きが落ちていることに気付く。それは……以前、姿を消したとされた隣の家の娘がよく履いていたものだった。
「なあ、知ってるかい? 凛子ちゃん。人間の肉ってな……甘いんだよ」
「………えっ」