第3章 想い袋 闇夜
「さあ、こっちへ来るんだ」
「嫌! 嫌だ!!」
「凛子!!!」
腕を振りほどこうと声をあげ、力を込めるが大人の力には勝てず。凛子の目尻に涙が滲む。そこに、劈くような少女の声が響いた。
「紗季!?」
「凛子! 大丈夫!? 凛子を離してっ!」
紗季が現れたのだ。彼女は凛子の腕を掴む村長の腕に噛みついた。痛みで思わず腕は離れ、解放された凛子を紗季はぎゅっと抱きしめた。
「うっ、ひっく……紗季っ」
「大丈夫。もう大丈夫だよ、凛子。なんだか、一人で行かせて心配になって、追いかけてきたの。まさか、こんなことになっているなんて」
「っ……!!」
凛子の見上げた先に、鬼のような形相の村長が目を見開きこちらを睨み付けていた。全身が危険だと叫んでいる、だが恐怖で足が竦み思うように動いてくれない。村長に背を向けてしまっていた紗季には、気付くことが出来ない。声をあげることも、何も出来ず凛子はただパニックで混乱していく。
「こんの小娘!!!」
「きゃっ!」
村長が長い足で、払うかのように紗季を蹴り飛ばした。家の中へ蹴り飛ばされた紗季は壁に背をぶつけ、その衝撃で蹲る。凛子は目の前の光景が、まるで現実ではないような錯覚を覚えた。