第3章 想い袋 闇夜
「うちの娘が、昨日から行方不明なんだ! 誰か、知っている人はいないか!?」
村中に響き渡る悲痛な叫び声。その声に目を覚ました凛子は、ゆっくりと身を起こした。家の玄関先が騒がしいことに気付き、おそるおそる近づくことにする。
「こんな朝早くに、どうしたんだい。血相掻いて」
「うちの娘が戻らないんだ。どこにいったのか……あんたんとこの娘と、本当に遊んでいなかったのかい!?」
「ちょっと待っておくれ、まさかうちの娘たちがあんたのとこの娘に何かしたとでも言いたいのかい?」
凛子の母と、その村人が徐々に口論のように声を荒げ始める。すると、声を聞きつけて父までもが「何の騒ぎだ」と不機嫌そうに奥からやってきた。
「聞いておくれよ、隣の家の娘さんが昨日から行方不明らしいんだけど。うちの娘たちと遊んでなかったか疑ってくるんだよ」
「うっ、疑ってなど……! ただ、心配で……っ」
「同じ子を持つ同士じゃないか、お前は奥へ戻っていなさい。俺が、代わりに話を聞いておくから」
凛子の父は困ったように母を宥め、奥へと背を押す。母は、隠れていた凛子に気付きそっと手を引いた。