第3章 想い袋 闇夜
村はずれの花畑、其処に二人はよく足繁く通っていた。時々、村の娘たちも彼女と遊ぶためその場を訪れた。村には笑いが絶えず、土地も悪くないことから農作物にも困らなかった。海は遠かった為、魚を口にする機会はほとんどなかったが、行商人たちが多く立ち寄るので小さい割には、栄えた村だった。
「紗季ちゃん! 凛子ちゃん!!」
「あ、おじさん。どうかしたの?」
紗季が凛子を連れ、村はずれから戻ってきたある日。村に住む仲のいいおじさんが、血相をかいて二人に駆け寄ってきた。
「うちの娘を見なかったか?」
「えっと……今日は、一緒に遊んでないよ。ね、凛子」
「……うん」
「そうか……もし見かけたら、お家まで送ってやってくれないか? どうやら、朝から出かけたきりちっとも帰ってこないんだ」
「もう夕暮れなのに? それは、心配だね」
「ああ。悪いね、見かけたら頼んだよ!」
足早に去っていく姿を、呆然と見つめていた凛子だったが紗季に手を引かれ、彼女の方へと振り向いた。
「どうしたの、凛子。早く家に帰ろう、母さんと父さんが待ってるわ」
「……うん」
ふわり、どこからか風に乗って甘い甘い花の香りが凛子の鼻孔を燻る。――これは? 不思議に思ったが、どんなに辺りを見回しても花など咲いてはいなかった。紗季が急かし始めたので、纏は小首を傾げながら気のせいだろうと考え家へと戻った。
そして、次の日。村は思わぬ騒動へと発展していった。