第3章 想い袋 闇夜
「あれは、私がまだ十五の頃……」
十五の凛子には、同じ年の双子の姉がいた。姉の名は、紗季。花のように明るく元気な少女で、両親や周りの友人達からも分け隔てなく好かれているような人物だった。凛子もまた、そんな姉を心底好いていた。
「紗季、今日は何処へ遊びに行くの?」
「いい処へ連れて行ってあげる! 凛子、おいでっ」
「ちょっと、待ってよ!!」
「二人とも! 怪我には気をつけなさいね!! あと、纏は体が弱いんだから無理したら駄目よ!!」
――はい!! と元気な二人分の声が、家屋へこだまする。母は、そんな二人を微笑ましいとばかりに見守っていた。父もまた、同じく。
外へ出れば村の者達ともすれ違う。その度に、笑顔を浮かべ紗季は挨拶を交わした。その後ろに隠れるように、凛子は控えめにお辞儀をするのみだった。対照的な二人だったが、何よりそれが彼女たちを見分ける手段の一つでもあった。一卵性ということもあり、彼女たちはまさに瓜二つであった。