第1章 想い袋 朝焼け
「どうした、凛子」
その手を、ぎゅっと握りしめてギンコは微笑んだ。今まで、感じたことのないようなものが、凛子の中へ流れ込んでくるのを、彼女は自ら感じ取っていた。微量な変化ではあるが、凛子が笑みを見せた気がしてギンコは彼女をじっと見つめてしまう。
――今、微かに笑ったような……気のせい、ではないと思いたいが。
「ねぇ、ギンコ。私、貴方の事もっと知りたいと思った。これは、なんて感情?」
「さぁ、ね」
表情がなんだか明るくなった気がして、ギンコは彼女が眠るまでその手を握り続けた。
朝になれば、また日が昇る。太陽が地上を照らし、未だ降り続く雨を退けるだろう。そうすれば、きっと心の有様にも変化が訪れればいいと。そう、思いながら、願いながら。
止まない雨は、ないのだと。