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蟲師 夢現

第1章 想い袋 朝焼け







「よし、これでいい。それと……嫌な話を、またさせるような真似をして悪かったな」
「いいの、わかってたことだから。蟲師が来るということは、そういうことだから。聞かなければ、何もわからないものね。しょうがない、よね」
「……そんなこと、いうな」


 安静にさせる為、寝室で横になっている凛子の傍らで、ギンコは優しく彼女の頭を撫でた。安心するようにと、少しでも嫌な気持ちが消えればいいと。願いながら。


「ねぇ、ギンコさん」
「ギンコでいいぞ。その方が……ほら、距離が近くなる気がするだろう?」
「何の、距離?」
「心の距離だ」
「心の、距離……」
「そうだ。人は、言葉を交わし誰かを大事に思いながら、少しずつ距離を近づけていくものだ。他人同士、本当の意味で分かり合うことはないだろう。だが、こうして名前を呼んで、同じ時を過ごして……そうすれば、感情も少しずつ、生まれていくだろう。お前さんに、必要なことだ」
「そう……」
「まずは、今近くにいる俺と仲良くなることから始めないか? 凛子」
「ギンコ……?」


 困ったような、でも優しく暖かい眼差しが凛子へと降り注ぐ。凛子が、ギンコへと手を伸ばす。

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