第1章 初めて喋った
「良いなぁ~コート上の王様が入ったのか~。」
「いや、でもあいつ性格に問題があってな…。
まぁ、色々あって明後日3対3やるんだよ、新入生プラスαで。」
「?」
「俺、影山、ちびvs大地さん、でかい1年、でかい1年の付録みたいな1年でさ。
これがまた大変なんだよなぁ…。」
「(付録…?)
そっか、まぁどこの部も悩みは尽きないよね。」
そこで話が途切れた。
「あ、宮口さん傘ねーんだよな?」
「?うん。」
「ちょっと待って。」
そう言うと田中君はいきなり電話し始めた。
「あ、姉ちゃん?
今家?迎えにきてくんね?」
少し話した後、ニカっと笑って言った。
「姉ちゃんが送ってくれるって!宮口の家まで!」
「!本当!?ありがとう田中!」
彼が自然と呼び捨てしたので、私もつい田中と呼んでしまった。
それだけで親近感がわいた気がした。
☆★☆★☆
「本当に助かりました!
ありがとうございます!」
「帰り道の途中だしついでついで!
それに龍がこんなに可愛い子とねぇ~?」
「おい姉ちゃんうるせーぞ!」
仲良いんだな、と微笑ましくなるやり取りだ。
冴子姉さんは見た目は怖そうなのに、中身は気さくで明るくて話しやすかった。
「この家?」
「あ、はい。
あの、本当にありがとうこざいました!」
私は頭を下げて車から降り、走って玄関へ向かった。
そのわずかな間でも、結構濡れた。
田中がいなかったら相当やばかったな…。
そう思い振り返り、再度頭を下げて家に入った。
第1章 初めて喋った(完)