第4章 海常バスケ部お泊り会〜夕食準備〜
「止めた?」
「止めた」
片方だけ耳を塞ぐのをやめて尋ねてくる。
こころなしか莉緒の目は潤んでいるように見えた。
あ、これやばいかもしれない。
俺は視線を合わせないように、眉間辺りをじっと見つめる。
「映像もない?消した?」
「消した。そんでDVDも出した」
「本当に?もう大丈夫?」
「ああ、本当にもう大丈夫だ。だから耳塞ぐのやめて、俺も手伝うから夕飯作ろう」
そう言って頭を撫でてやれば、莉緒はもう片方の手を外し、膝を抱えて俺のワイシャツの袖を掴んだ。
「何でホラー映画なんかかりてきたの?」
「俺じゃなくて森山と黄瀬だ。黄瀬が見たくて、おもしろそうだから借りたんだってよ。さっき言ってただろ」
「聞いてなかった。何で止めてくれなかったの?」
「俺も知らなかったんだよ。さっきつけるのみて知った」
「私が苦手なの知ってるくせに…」
莉緒が袖を掴む手を更に強くする。
相変わらず目は潤んだままで、今までの言動からだと拗ねているようだ。
こいつ、かわいいな。
…
……
………
…いや、待て。
何だ今のかわいいって。
あれだよな!?妹とか、小さい子みたいな年下に抱くかわいいだよな!?
あ、でもこの前久しぶりに目が合った時、急に顔が熱くなったよな。
しかも、さっきこいつの潤んだ目を見て、俺やばいかもしれないって…。
…
……
………
…いやいやいやいや、待て待て待て。
相手は妹だぞ。
血はつながってなくても妹なんだぞ幸男!!
いくら俺が唯一コミュニケーションをとれる女子だからって、そんなことはないはずだ。