イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第1章 恋心
(きっとこのドレス選びで、
侯爵様への印象も違うんだよね)
そんなことを思いながら、
深くため息をつくサラ。
(だめだめ、
ため息なんてついている場合じゃない。
がんばって侯爵様に認めてもらわなくちゃ)
サラは首を振って、
膨大な数のドレスを挑むように見つめた。
ユーリはそんなサラの姿を、
優しい眼差しで、ただ黙って見つめていた。
新しいドレスを見つけては、
ぱっと表情を明るくして
意気揚々と試着室へ入り、
鏡の前に立つと、しゅんと萎んだ顔をする。
(あっ、またため息ついた。
サラ様ってくるくると
本当によく表情が変わるなぁ。
ずっと見ていたいけど…
そろそろ助けてあげようかな)
「サラ様」
ユーリは壁にもたれかけていた背中を離すと、
ゆっくりとサラに近づいた。
「ユーリぃ…」
そういって振り返るサラの瞳は潤んでいて、
一生懸命に考えていたことを伺わせる。
(あ~あ、泣きそうになっちゃって、可愛い)
「どうしよう、決められないよ…」
涙ぐむサラの頬を、右手でそっと包み、
ユーリはくすっと笑った。
「サラ様、もっと気楽に考えていいんだよ?
ただの食事会なんだから。
今まで試着したドレス、どれも似合ってたよ」
「でも…」
「でも?」
ユーリが首を傾げて覗き込むと、
サラはまつ毛を伏せ、小さな声で告げる。
「わたしの選んだドレスで、
教育係のジルやユーリ、
お城のみんなまで悪く言われたら…」
サラの言葉にユーリはわずかに目を見開く。
(サラ様、そんな事考えてくれてたんだ。
優しいなあ)
ユーリは空いているもう片方の手で
頬を引き寄せて、
サラの額に
柔らかく触れるだけのキスを落とす。
サラは肩をぴくりと震わせた。
「待ってて」
唇が触れそうな位置で囁くと、
にっこり微笑んで
ユーリはクローゼットの奥に消えていった。