イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第30章 【禁断の果実】~第7章 堕ちる~
「穏便にウィスタリアを手に入れたくて
サラ様に近づいたんだ。
でもサラ様、全然俺の思い通りにならなくて。
本当にうっとうしかった。
でも、もういいや。
別の方法でウィスタリアを手に入れるから」
『そんな……うそ、
うそだよ。
ユーリは優しい人だもの。
誰かを傷つけてまで
国を手に入れたいなんて、
思うはずない…っ!』
サラは、声を震わせた。
雨に打たれ、
雫が滴る、プラチナブロンドのユーリの髪。
その隙間から覗く琥珀の瞳は、
凍り付いてしまいそうな程
冷たい色を宿していた。
『っ………』
「さあ、参りましょう」
白髪の男に手を添えられ、
ユーリの背中が
追っ手たちと、雨の中に埋もれていく。
『ユーリ…、待っ…………』
目の前の状況が信じられなくて、
上手く声が出ない。
[うそ……そんなの、うそ……]
動揺するサラの耳に
白髪の男の声が届いた。
「王子、ウィスタリアのプリンセスは
いかがいたしましょう」
「……放っておけ。
こんな場所、ウィスタリアの馬鹿な騎士団に
見付けられるわけがない。
いずれ、のたれ死ぬ」
普段のユーリからは想像出来ない程の、
冷めた声。
頭が……ついていかない。
[騙されていた…最初から?
全部、ウィスタリアを手に入れる為?
……あるはずない。
あんなに優しく笑ってくれた、
励ましてくれた、
その時間まで演技だったなんて…
ユーリはそんなこと、出来る人じゃない…]
サラの脳裏に、
関係がおかしくなる前の……
ユーリとの、優しかった時間が過る。
ユーリの事を、強く信じるけれど
その背中は小さくなっていく。
知らない内に、大粒の涙が溢れ
目の前が見えなくなっていく。
『……ユーリ……ユーリっ…』
と、追っ手の一人が、
低く言い放った。
「万が一の事があってはいけない。
…………殺せ」