イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第30章 【禁断の果実】~第7章 堕ちる~
サラの背後では
強い風が、寒々しく音を立てながら、
谷底に吸い込まれていた。
ユーリは剣を構えたまま
サラを庇う様に立つ。
雨に曝されたユーリの肩が
激しく上下していた。
[っ……!
これ以上戦ったら、ユーリがっ…]
サラを護りながら戦い続けて
体力は限界なはず。
“ユーリだけでも逃げて”
サラが、咄嗟にそう伝えようとした時。
追っ手の一人、
おそらくリーダーであろう、白髪の男が
ゆっくりとユーリの前に進み出た。
「やはり、生きておられたのですね、王子」
追っ手の言葉に
ユーリの背中がぴくっと震える。
[…………?
王子?]
「ずっと探しておりました。
やっと、お会いすることが出来た…」
[この人、ユーリを…知ってる?]
サラは困惑した。
目の前にいる追っ手たちは、
ジルの言っていた
「ウィスタリアを手に入れようとしている者」
に違いないだろう。
それが、ユーリを知っている?
それに王子?
[どういう…こと?]
ユーリの様子を伺うが、
何も答えず、
ただじっと、追っ手たちを見据えているだけ。
白髪の男は、
落ち着いた、しかしどこか高揚したように言う。
「やはり貴方は素晴らしいお方。
私には、一瞬で分かりました。
貴方様は、我らの悲願の為に
自ら、ウィスタリアに潜伏して下さっていたのだと」