イケメン王宮◆ユーリ×プリンセスの物語【R18あり】
第30章 【禁断の果実】~第7章 堕ちる~
『ユーリっ』
サラは一抹の不安を覚える。
それもそのはず。
お茶を淹れたり、身の回りの世話をしたり。
ユーリは、ただの執事なのだから。
が、
不安は一瞬で消し飛んだ。
剣を構えるユーリは
隙がなく、見事なほどに美しかった。
剣術のたしなみがないサラが見ても
一目瞭然なほど。
[ユーリ…]
たんっ…
と軽く地面を蹴り、
一瞬で追っ手の懐に潜り込んだユーリ。
無駄のない流麗な動きで、巧みに短剣を操り、
次々と追っ手を地面に転がす。
(すごい……!)
危険な状況にも関わらず、
サラはユーリの剣技に目を奪われる。
剣が空を切る音と、澄んだ金属音。
閃光のような切先が、雨を弾く。
あまりの美しさに、唖然としていると
「こっち」
ユーリは、またサラの手を握って
走りだした。
時折、振り返り応戦しながら
雨の、道のなき山中を進んで行く。
が…。
数は減ったものの、
なかなか追っ手は巻けない。
とうとう、二人は取り囲まれ
崖の淵に追い詰められた。